内閣官房と外交について(その33)

日本版NSC設置法案をどうも明日から始まる通常国会に提出するようですね。

安倍首相:危機管理「官邸に集約」…本紙インタビュー
◇NSC法案、通常国会提出も
 首相は「一元的に情報を集め、的確に分析し、政策を立案する。情報機関にどういう情報を集めるべきか発注もしていく。そういう機能は官邸にはない」と述べ、外交・安全保障政策と危機管理の司令塔機能を首相官邸に集約する方針を説明。07年に提出した法案は廃案になっており、有識者懇談会で改めて検討したうえで再提出を目指す考えを示した。

政府、NSC法案提出へ 安保政策の権限 官邸集中に懸念

 政府は、首相官邸の外交・安全保障の司令塔機能を強化する「国家安全保障会議(日本版NSC)」の設置法案を二十八日召集の通常国会に提出する方針を決めた。政府関係者が明らかにした。アルジェリア人質事件を受け、情報分析機能を官邸に集約し、即応できる体制を早期につくる必要があると判断した。ただ、野党には慎重論もあり、参院与野党が逆転した「ねじれ国会」での成立は見通せない。

 日本版NSCは、米国のNSCをモデルとした新組織。現在は政府に安全保障会議があり、防衛大綱などの審議、北朝鮮のミサイル発射などの緊急事態時に対処方針の議論をしている。NSCでは安保会議の機能を拡充することになる。

 政府は人質事件で、人質の安否情報などが錯綜(さくそう)した経験から、主に情報収集・分析力を強化させる方針。来月に有識者会議を立ち上げ、法案づくりを急ぐ。提出時期は二〇一三年度予算案成立後の五月中旬以降がめどとなる。

 NSCは安倍晋三首相の思い入れが強く、第一次内閣の時も設置法案を提出したが、退任後に廃案になった。自民党は先の衆院選でも設置を公約した。

 ただ、NSCは安全保障政策の権限を官邸に一極集中させることになるため、野党からは国会のチェック機能が届きにくくなるとの懸念も出ている。夏の参院選前に十分な審議時間も取れない見込み。政府・与党は、参院選までは安全運転の国会運営を心がける構えで、強引な成立は目指さないとみられる。

さてついに、日本版NSCが設置される可能性が出てきました。もう賢明な読者はお気づきでしょうが、ここで問題となるのは、行政権は内閣に属するため、あくまでも閣議決定によらなければ何もできないという点と、もう一つは、外務省及び防衛省の所掌とどう区別するかということです。結局日本版NSCができてもそこで決まったことはもう一度閣議決定しなければ政策として実行されないわけです。
となると、あんまり今と変わらないんじゃないかということになるのかもしれませんので、一つアイディアでも提示します。
安全保障に関する広範な権限を日本版NSC決定に与えるという閣議決定を行ってしまうのも一つの手かもしれません。
ただ、そんな閣議決定今までなかったでしょうから、内閣法制局は阻止する可能性が高いですね。
結局、そこでの決定が即政策にならない限り、新たな組織を作っても、あまり意味がないわけです。もちろん、事務局を作って、その事務局で、長期的に何かを分析し続けるとかいうことならそれはそれで意味がありそうですが。

で、話は変わって上の記事についての批評。
毎日新聞については、特段意見はないのですが、東京新聞の記事の日本版NSCについての批評がひどいです。
「NSCは安全保障政策の権限を官邸に一極集中させることになるため、野党からは国会のチェック機能が届きにくくなるとの懸念も出ている」とありますが、官邸に一極集中させようが、外務省、防衛省に分極させようが、国政調査権を持っているのは国会ですし、国会で質疑が出来るのですから、全く今と変わらないはずです。新たな所掌が増えれば、チェック機能が聞きにくくなる可能性はあるでしょうが、日本版NSCが出来たからといって政府の所掌が増えるわけではないので、チェック機能は変わらないでしょう。
とりあえず、少しずつ日本の安全保障体制も前進しているようです。

内閣官房と外交について(その32)

速報を見る限りでは、自民党の大勝で、民主党の大敗で、維新の会がそこそこってところでしょうか。
で、テーマは内閣官房と外交というこのブログではおなじみのテーマですが、自民党は、公明党と組むよりも維新の会と汲んだほうが外交安全保障政策はうまくいくのではないかと。
国家安全保障会議設置法案なんて再可決で一発でいけるでしょうし。
ただ、憲法改正衆議院参議院が対等の権限を持っているのでなかなか厳しいのかもしれません。
これからの数年間は、外交安全保障、特に安全保障の分野が激動の時代を迎えるでしょう。それに対応できるだけの現実的な政策が望まれます。
そのためにもとりあえず、国家安全保障会議の設置をしましょう。
未来の党の公約にも国家安全保障会議の設置は載っていますしね。

内閣官房と外交について(その31)

民主党の公約も出ましたので、それについての批評でも。当然、分野は外交、安全保障です。
3年間政権を担当して色々現実が分かったのもあってか、外交、安全保障分野は現在の政策の継続しか書いていません。
現実的といえば現実的です。
自民党同様に、普天間という単語もどこにも見当たりません。
ただ、非常に具体性が薄いマニフェストばかりでこれでは、ただ平和になればいいと願っていて、その平和に至る道筋、手段を示さない人と同じ匂いがして、好感が持てません。自民党の公約のほうはできるかどうかは別として、具体的な案が書かれていたので非常に見劣りします。
ただ、前回の衆議院選挙の時のマニフェストはこれ以上に内容の薄いものだったため、寄せ集めの民主党としては。これくらいのことが文字で書ける限界なのかもしれません。仮に、具体的な外交、安全保障政策を書こうとしたら、民社党から社会党までの集まりですから、党が割れてしまう可能性がありますから。
民主党の公約はもっと具体的に書いてほしいですね。
しかし、首相の権限強化のためには、国家安全保障会議を作ることが最も手っ取り早いはずなのですが、それを載せていないのはどういうことですかね?

内閣官房と外交について(その30)

私の想像よりも早く総理が衆議院を解散してしまいましたが、それはもう変えようがないので、これからのことでも。

自民党の公約は賛成と反対の嵐ですが、その中に、このブログでは何回も言及している国家安全保障会議の設置があります。
これは現在の安全保障会議設置法をほぼ全部改正する形で、安部内閣の際に提出していたものですが、廃案になったものがありますので、閣議決定して国会に提出するまでは非常に容易でしょう。国会で可決されるかどうかは分かりませんが。
安全保障関係の他の公約は今までの路線変更ですから、憲法に関わる問題は内閣法制局との戦いや、今更防衛大綱を変えるのかということもあり、結構厳しいでしょうから、まずはすでに法案が一度出来上がっている国家安全保障会議を設置することで、実績を作ってポイントを稼ぐのが賢明だと思います。
なんでもそうですが、いきなり大規模な改革はできません。
まずは、できることを着実にして、それからこれくらいの改革なら、可能だなと思ったら思い切った改革をやるべきです。
当たり前ですが、大臣だけでは政策を作ることも、進めることもできません。
おそらく自民党が勝つでしょうから、そこで調子に乗って一気にやろうとすると民主党の二の舞になるでしょう。

それと「普天間」という単語は、いくら探しても公約の中に見当たらないのですが、そういう意味では、きちんと何がすぐにできて、何がすぐにできていないかは分かっているのかもしれません。

自民党の公約への批評はこのくらいで、次は民主党の公約が出たら、その批評をしてみたいと思います。

国会議員について(その1)

田中真紀子文部科学大臣が大学認可について、報道されていることは誰でも知っていますが、今日はその話でなく、この方が政策について考えてみたいと思います。
そこで、彼女のホームページをグーグルで検索してみたところ、どこにもHPが見当たらない!!
いくら探してもないんです。
どんな国会議員でも自分のホームページを持っていますが、どうも彼女は国会議員で唯一ホームページを持っていないようです。こんなことがありえるとは・・・
選挙公報か、衆議院の総選挙の際のテレビの放送では一人で政策を言っているはずなので、それも探したのですが、全く見つかりませんでした。

そういうわけで、彼女の政策は全く分かりません。
過去色々批判された国会議員はいましたが、とりあえず、政策だけはみなさん、建前だけかもしれませんが、発表されていました。
しかし彼女だけは唯一政策が分かりません。
こんなことがあるとは・・・

内閣官房と外交について(その29)

またまた時間が空いてしまいましたが、もしかしたら読んでくれる人がいるかもしれないと信じて書きます。

日本はなぜ開戦に踏み切ったか―「両論併記」と「非決定」 (新潮選書)

日本はなぜ開戦に踏み切ったか―「両論併記」と「非決定」 (新潮選書)

本来なら書評のところにでも書くべきなのでしょうが、これはまだ買ってもないし、当然読んでもないので。
題名を見ると、「「両論併記」と「非決定」」とあるので、おそらく結局は、以前からこのブログで書いているように、分担所掌事務の問題で整理しているのかなと思ったり。結局今の時代も二つの省庁が対立した場合、閣議決定はできないわけで、両論併記で閣議決定するか、決定せず延々と協議するかしかないわけです。
ただ、内容を読んでいないので、読んだら書評を書きます。
読まずにこんなこと書くのはよくないことですが、少しばかり色々なことを考えたので書いた次第です。
もちろん総理がリーダーシップをとれば別ですが。

内閣官房と外交について(その28)

かなり間が空いてしまいましたが、標記についてです。
まずは報道記事を。

Jアラート作動なし 総務大臣「内閣官房の責任」

 北朝鮮のミサイル発射で、自治体や国民に瞬時に情報を伝える全国瞬時警報システム「Jアラート」を作動させなかったことについて、川端総務大臣は「運用は内閣官房の責任」と述べました。
 Jアラートは、ミサイル情報などの情報を内閣官房総務省消防庁に伝えるボタンを押し、それを受けて、人工衛星を使って自治体に速報します。政府は、13日午前7時40分に発射の情報を得ていたものの、レーダーから消えたことから、Jアラートを作動させなかったと説明しています。川端大臣はJアラートについて、総務省内閣官房からの情報の「受け手」だと強調しています。また、総務省ではミサイル発射情報を受けて、沖縄県庁や県内12の市町村、九州各県と連絡を取り、午前8時45分の段階で被害がないことを確認したということです。

野田政権、ずさんな危機管理=連携に不手際、まずい判断−北朝鮮ミサイル

北朝鮮が13日強行した長距離弾道ミサイル発射で、日本政府の危機管理のずさんさが露呈した。午前7時39分の発射情報を米軍から直ちに得ていたが、政府が公表したのは発射から44分後。上空通過が想定された沖縄県の各自治体に情報を伝える全国瞬時警報システム(Jアラート)も活用されずじまい。問題点として浮かび上がったのは、関係閣僚の連携の不手際と判断のまずさだ。
 米軍の早期警戒衛星(SEW)が捉えた発射情報は午前7時40分には防衛省へ伝達された。しかし、官邸対策室に伝えられたのは同8時16分。藤村修官房長官は「(防衛省が)さらなる確認を行っていた」と説明する。田中直紀防衛相から藤村長官への電話連絡も同3分。首相官邸防衛省の連携不足は明らかだ。
 しかも、藤村長官は同7時42分には、SEW情報を「別ルート」から入手していた。にもかかわらず、官邸対策室は同8時7分に「発射を確認していない」と発表。政府の初動対応の混乱について、種谷良二内閣審議官(危機管理担当)は「(官房長官と官邸対策室は)情報共有できていなかった」と認める。
 Jアラートの運用もお粗末だった。このシステムを活用しなかった結果、政府からの公式情報が伝わらないまま報道が先行し、関係自治体を混乱させた。藤村長官は「わが国の安全を脅かす事態は生じていないと判断した」と説明。これに対し、沖縄県の又吉進知事公室長は「Jアラートが作動せず、違和感を抱いた。政府に説明を求めたい」と強い不満を示した。
 政府内の説明には食い違いもある。藤村長官は記者会見で「何かが飛び立った。それはレーダーで確認していた」と明言。しかし、防衛省幹部は自衛隊のレーダーでは捕捉できなかったと、米軍情報の確認に手間取ったことを認めている。
 政府の初動対応を野党は一斉に批判、野田佳彦首相や田中防衛相ら関係閣僚を追及する構え。政府内からでさえ「官邸は危機管理の備えができていない」(高官)との厳しい声が上がっており、野田政権にダメージとなるのは避けられそうにない。(2012/04/13-21:16)

さて、この中でいう内閣官房とはいつもこのブログでのべている内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)のことでしょう。
で、どもこの2つの記事を見るだけでも、内閣官房総務省防衛省がすでに責任のなすりつけ合いを恥じ円ているのが分かりますね。
結局Jアラートを使用しなかったのは、内閣官房の責任なのか、総務省の責任なのか、SEW情報は防衛省には、入っていたようですが、それが内閣官房に伝わらず、なぜか別ルートで官房長官のところに伝わったとか。
さてさて、どうしてこのようなことが起きるかというと、やはり内閣官房の位置づけの不明確さが第一に挙げられるでしょう。
以前も述べましたが日本の行政権というものは基本的に分担所掌でやってきましたので、各省に行政権はあるのであり、内閣官房には基本的にはなく、そのため事業を内閣官房はもたず、企画、立案及び総合調整しかできないようになっているわけです。一方この総合調整権限を本気で使ったら凄まじい力を発揮するという解釈もありますから、今回は取りまとめになったとみてもいいでしょう。しかしながらこの2つの解釈は究極的には矛盾するものであり、他の省はやはり、内閣官房を煙たがっているもの事実でしょう。
そのあたりの一端が今回出たのかもしれません。
さてさて、これから責任の押し付け合いが始まるのでしょうか?