内閣官房と外交について(その37)

このシリーズを書いてきて今更ながら思ったのですが、題名は「内閣官房と安全保障について」の方が正確なのかもしれません。

で、待ちに待っていた、国家安全保障会議の概要が発表されました。
で、以下はネットニュースからの引用です。

NSC法案の要綱概要
政府の有識者会議が28日まとめた日本版NSC(国家安全保障会議)創設関連法案の要綱概要は次の通り。
 内閣に国家安全保障会議を設置▽外交・防衛政策の司令塔となる4大臣会合を新設。首相、官房長官、外相、防衛相が出席し、機動的、定例的に開催。中長期的な国家安全保障戦略を策定▽安全保障会議の機能を引き継ぐ9大臣会合は国防に関する重要事項を審議▽緊急事態大臣会合を新設。あらかじめ事態の種類に応じて首相が定めた閣僚が出席し、緊急事態への初動を審議
 国家安全保障担当首相補佐官を常設▽内閣官房に事務局となる国家安全保障局を設置。同局は外交・防衛政策の基本方針・重要事項を企画立案し、緊急事態に当たり必要な提言を行う。スタッフは自衛官や民間からの登用を検討
 関係行政機関の長は資料・情報を会議に適時提出しなければならない。会議は関係行政機関の長に資料などの提供を要求できる▽会議出席者に守秘義務を課す▽官房副長官と国家安全保障担当首相補佐官は会議に出席できる▽統合幕僚長などの関係者は議長の許可を受けて出席できる▽関係行政機関などに国家安全保障会議幹事と情報連絡官を置く(2013/05/28-18:49)

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201305/2013052800753

引用終わり!

それではここからが論評です。
1点目は、NSCを作るってことは意思決定についての大幅な変更があるのかと思っていたのですが、どうもそこまで意思決定を行う場については、変更がないようです。この報道を見る限りでは閣議決定を必要とするみたいです。やはり、内閣法制局が反対したんでしょうね。現行の憲法では閣議を通してしか意思決定が出来ないと。
ただ、その意思決定をするまでの過程において、総理や官房長官へのフォローが手厚くなっています。そりゃ、そうですか。結局は、内閣官房を強化しているということですから。
2点目は、情報の提出の義務がきちんと書かれているということ。現在の内閣法には何も書かれておらず、その下の内閣官房組織令に内閣情報官に連絡調整の権限が与えられているだけで、それも情報の提供義務はありません。それを入れているというのは結構革新的な内容になっています。日本国憲法の解釈上、分担所掌を旨とする内閣でありますから、ここまで書くのは結構すごいことです。
3点目は、この報道からは見えてこないのですが、内閣危機管理監と内閣安全保障局長との関係です。危機管理と安全保障って結構似ているので、そのあたりどうなっているのかは国会に提出される条文案を見ないと分からないので、論評できません。
4点目は、これは蛇足なのですが、「国家安全保障局」という名前。筆者はPKO事務局を想像して、「国家安全保障会議事務局」という名前を想像していたのですが、この名前にするとは。ちなみにもう勘のいい読者はお気づきでしょうが、これの米国版はNSAと言われ、エシュロンを運用している謎の集団。確かに名前は事務局よりはかっこいいですが、少し誤解されそうな名前ですよね。名刺はかっこいいだろうな〜

しかし気になるのは内閣情報調査室との関係、NSCは情報を提供することを各省庁に依頼できるのに、内閣情報調査室が各省庁に依頼できないのはなんとなく直感的には変な気もしますが、そのあたりどう整合をとろうとしているのかが気になります。